平成 30 年 4 月 13 日の知的財産戦略本部会合・犯罪対策閣僚会議で「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策 (案)」等について議論され,短期的な緊急措置としてインターネットサービスプロバイダ (ISP) 事業者によるブロッキングが検討されています.
情報処理学会インターネットと運用技術 (IOT) 研究会には,学術機関や企業など組織のネットワークを管理運用している研究者・技術者が数多く参加しています. 我々はそれぞれの組織ネットワークの維持管理はもちろん, インターネット全体の健全な発展のため研究や技術開発, ステークホルダ間の調停など様々な業務に勤しんでいます.
このような立場から, IOT 研究会は以下の理由により今回のブロッキングに反対します.
ブロッキングには特定の IP アドレスへの通信を遮断する手法や DNS を利用する手法などいくつかあり, そのどれもが手間に見合う十分な効果を生じないことがわかっています. しかも,ブロッキング対象となる通信だけでなく全ての通信にその影響が及ぶ可能性があり, 効率的でありません. さらに, 手法によっては憲法に謳われている通信の秘密を侵害するおそれがあります.
もちろん, 我々は海賊版配信サイトの存在やそれらが利用されている状況を憂慮していますし, 漫画に限らずインターネット上のコンテンツが健全に流通し発展していくことを願ってやみません. しかし, 今回のような状況に対してブロッキングのように ISP の運用でカバーすることは副作用も大きく非効率的です. それよりも, ホスティングサービス運営者やコンテンツデリバリネットワーク側へのコンテンツ削除要請, 海賊版配信サイトへの広告配信の差止め要請などを含む, 海賊版配信サイト運営にかかるシステム全体への法的措置のありかたへ議論が進むことを望みます.
平成 30 年 4 月
情報処理学会インターネットと運用技術 (IOT) 研究会
※この声明は平成30年4月に作成しましたが,発表するにあたり情報処理学会の了解を得る手続きが必要となり,同年10月に発表しました.